メンタル不調を引き起こす主因として、対人コミュニケーションの問題が大きく存在します。バランスの取れたコミュニケーション方法、もしくはその根底にある立場、考え方として「アサーション」について学んだことがあるので紹介します。
「アサーション」とは
「アサーション」とは英語の「assertion」から来る言葉。直訳では「主張・断言」との事ですが、メンタルヘルスの世界では、少しニュアンスが異なっており、自分は「相手も自分も大切にする考えや行動」と習いました。
同じ意味の言葉として、「アサーティブ」「アサーティブネス」と呼ぶ事もあります。
自分の怒りの感情を抑えられず、激しい言葉を使って相手を傷つけてしまったり、逆に思っている事を口に出す事ができず、一人で抱え込んでしまったり、そんな事を回避するためのコミュニケーション方法の元になる考え方と言えます。
アサーションの3タイプ : ドラえもんの例えが分かり易い
「アサーション」を理解する上で、頻繁に「ドラえもん」の登場キャラクターを使った説明が使われます。自分が購入した書籍の中でもこの例が使われていて、とても分かり易かったです。
- ジャイアン(アグレッシブ:攻撃的)
- のび太(ノンアサーティブ:非主張型)
- しずかちゃん(アサーティブ:中立型/バランス型)
アグレッシブ(ジャイアン)
攻撃的なタイプ。自分の考えを思った通りに相手に伝える事に主眼が置かれます。相手の気持ちや体調をあまり気にしません。言葉口調もやや高圧的になる傾向があります。自分の思い通りに支配できる一方で良好な人間関係が築き難いと言えます。
「俺のモノは俺のモノ、お前のモノも俺のモノ」
ノンアサーティブ(のび太)
アグレッシブとは正反対。自分の考え・気持ちを主張しないタイプ。自分の考えを伝える事の優先順を下げ、相手の主張を受け入れる事で物事を進めがち。他人任せにして現実逃避してしまう傾向があり、思い通りにならない事でストレスを貯め易い傾向があります。
アサーティブ(しずかちゃん)
アグレッシブとノンアサーティブの中間に位置するバランスタイプ。自己主張すべき局面と相手の主張を受け入れるべき局面をバランス良く判断します。自分の気持ちを押し殺す事もせず、相手に伝えますが、伝え方についても相手の気持ちを尊重した表現方法を選びます。
アサーションのポイント
次にどの様な点に気を付ければ「アサーティブ」だと言えるのか?について考えてみます。
- 自分の気持ちや考えは素直に伝える
- その場に居る全員が対等の立場にあると考える
- 相手に対するリスペクト、感謝の気持ちを忘れない
- 相手に要求するだけではなく、自分自身も責任を持つ
- 伝える事が目的ではなく、伝えた先にある目的達成のために最善な伝え方を考える
アサーションの具体例
最後に「アサーション」の具体例を幾つか紹介します。頼まれごとを断りたい時の表現方法。在りがちなシチュエーションだと思います。
職場の同僚:「この資料整理、急ぎなんだけれど手伝ってくれないかな?」
- アグレッシブ:「あなたの仕事だよね? 無理だよ」
- ノンアサーティブ:「わかった。いいよ」 ※自分がやるべき仕事があるのに受け入れてしまう。
- アサーティブ:「大変そうだね。手伝いたい気持ちは山々だけれど、自分も本日期限の仕事があるので無理なんだ。ごめんね。」
アサーティブな回答も結果としては「No」回答なのですが、「相手の苦しい立場に共感姿勢を示し」「理由を明確に伝えた上で断り」「申し訳ない気持ちを表現」しています。
断られた職場の同僚にも誠実な姿勢が伝わり易く、次回困った時にまた相談に来てくれる関係性が保たれたのでは無いでしょうか? 逆に自分が困った時にも相談がし易くなると思うのです。
最後に念のため
リワーク支援施設で、学んでいた時期に感じた点があるので、最後に付け加えておきたい事があります。
「アサーション」は、コミュニケーション技法の側面は間違いなくあって、出来ないより出来た方が絶対に良いのですが、同じ施設で学びを共にした別の方が、気になる発言をしていました。
「自分はアサーションを十分に理解・習得できたので、今後相手に自分の主張を受け入れさせる場面で活用したい」
これって、話術としての「アサーション」が見に付いたのかも知れませんが、根底にある考え方は既に「アグレッシブ」であり、全然「アサーティブ」だとは思えません。
「しずかちゃん」は、ジャイアンやのび太と円滑な交渉をしたいから、アサーティブなコミュニケーション手段を採用している訳ではなく、人格・性格そのものが「アサーティブ」なのだと思っています。
「アサーション」は口先だけのテクニックで終わらせるのでは無く、内から滲み出る人間性にも反映されて欲しいと願う次第です。